「ゼーレが敵であることには変わりない。
しかし倒すべき敵は他にいる」
俺は静かにそういった。
「俺達の本当の敵は事実上この世界を見捨てた書物の中の人物達・・・
それは神の使いと呼ばれている人物"天使"。
こいつらが俺達の敵だ」
第十二話「秘密」
シュウジ
キョウが静かに言った。
「天使って何言ってるのよ!!」
「言いたいことはわかっています、しかしこれは事実なんです。
あなた達が知っている死海文書と呼ばれる物は、天使が書いていた物。
そしてそれを見つけるのが、ゼーレということも決まっていたこと。
彼らにとってはそれさえもシナリオの一つなんですよ」
ナオコの言葉を予測していたかのように、キョウは話を続ける。
彼女もキョウのことを信用しているとはいえ、このキョウの発言に困惑しているらしい。
他の人達は黙って、キョウの話を聞いている。
ただキョウの発言に、頭の中がパニックになっているだけかもしれないが・・・・
キョウは話を続けていく。
「その死海文書の中に書いてあった"使徒"は人間の一つの可能性ってことも知っているでしょう。
天使は神の変わりにそれらに関して監視するのが仕事。
そして天使に見限られたら、世界は滅ぶことになる。
しかし天使は直接手を出すことが出来ないから、サードインパクトをゼーレにやってもらうって言うのが奴らの手口」
「ちょっと待ってよ!!じゃあセカンドインパクトは・・・」
キョウの説明に、ミサトは自分の気になっている部分を聞く。
ミサトがネルフに入ったのは父親の敵討ち、使徒の殲滅のために入ったのだ。
しかしキョウの言葉から推測すると天使の仕業という可能性が高い。
ならば本当の敵討ちの相手は天使では無いのか!?と・・・
気にならないはずが無い。
「いや、直接天使によって起こされたわけではないんです。
あれは人間がアダムにチョッカイを出したから、ああなったんです。
実際、何もしなければ何も起こらなかったんです。
葛城博士はS2機関を研究していたんでしょう、それによりセカンドインパクトが起きた」
「じゃあ・・・・」
ミサトにとっては一番辛い可能性であった。
天使の仕業と考えていた時、この考えも頭の中に浮かんだのだ。
でも考えたくなかった、信じたくなかった。
その考えはミサトにとって、もっとも否定したかった可能性・・・・
しかしその考えは当たってしまった。
「そうですね、使徒のせいでは無い。
もちろん天使のせいでも・・・・
他ならぬ自分の責任って所でしょうね」
「・・・・・・・・」
ミサトはキョウの口から最も聞きたくなかった事を聞いてしまい呆然としている。
リツコはそのミサトの姿を見て、複雑な表情をしていた。
リツコはミサトのことを大学から見てきている。
私生活のことも多少なりとも知っていたし、ミサトが使徒を目の敵にしていることも知っていた。
でもリツコにはその事を止める自信は無かった。
もし≪私に愛すべき人が出来、そしてその人を殺した犯人を許せ≫といわれても、リツコには到底出来るものではないと思っている。
ミサトと同じ道に入っているだろう事はわかっていたのだ。
だからリツコはミサトを止めることは出来なかった。
復讐が終わった後、何も残らないと知っていても・・・・
キョウはミサトの表情に気づいていたし、シンイチからミサトの事情も知っていた。
だからこそ、気づいて欲しかったのかもしれない。
それがどれだけ無意味なことかと・・・・
キョウは気を取り直して話を続ける。
「天使は直接手を出すことは出来ない。
しかし天使が直接手を出せるイレギュラーも存在しています」
「イレギュラー?」
ユイがキョウの話している中で、気になる言葉を口にする。
「異世界から来た俺、平行世界から来たシンイチ、そしてこの世界でのチルドレン」
ユイの言葉にキョウは、イレギュラーの名前を言った。
「ちょっと待って、なんでチルドレンが狙われるの!?
エヴァに乗れる以外は普通の子供よ!!」
キョウの発言にユイは困惑している。
チルドレンといってもエヴァを操れる、という特別な能力があるだけだ。
極端に身体能力が優れているわけでもない。
ユイは、なぜ狙われるのか、という事で頭がいっぱいだった。
「チルドレンといっても、シンジとレイだけです。
セカンドチルドレンはイレギュラーではない」
「じゃあなんでシンジ君とレイだけなの?」
リツコは最初エヴァに乗れる者は狙われるのか、と思っていたがキョウの発言でその考えは崩れた。
それによりリツコは余計に訳が分からなくなった。
「二人には使徒と同じ物を持っているから」
「同じ物って・・・・まさか!!!」
リツコはキョウの言葉を聞いてある結論に達した。
使徒、エヴァにあって人間には無いもの。
そう考えたら、答えは一つしか見つからなかった。
「そう、シンジとレイにはコアというものがあります」
「「「「な!!!」」」
皆はその言葉に驚いた、いや驚いていない者もいるが・・・・
驚いていないのは事情を知っている、シンイチとキョウだけだった。
キョウは少し考えてゲンドウに言った。
「レイについては碇司令のほうが詳しいでしょう?
レイについては司令のほうから聞きましょう、俺の口から言っていいシロモノでは無いですからね」
「・・・・・」
しかしゲンドウは無言のままだ。
その顔からは何か悩んでいるようにも見えた。
事情を知っているらしいナオコ、冬月、ユイの三人の表情からは苦悩の表情が窺える。
それを見ていたキョウは、はっきりと言った。
「このまま言わないつもりではないでしょうね?
ここに居る人たちはこの話を聞く資格がある人達です。
レイに対してどう思うなんていませんよ」
キョウの言葉にもあまり反応を示さない。
すると今まで黙って話を聞いていたシンジがゲンドウ達に言った。
「僕に関して言いづらいのかな?そんなの気にしなくていいよ」
シンジの言葉に、ゲンドウはゆっくり話し始めた。
「わかった、話そう。
この話をするには10年前の話をしなくてはならない。
それはエヴァの実験の話からだ」
=エヴァ機動実験=
今のエヴァンゲリオンとは違い、素体が見えその体中にはチューブがたくさんついている。
小さい頃のシンジの周りには忙しそうに、白衣を着た研究員が動いている。
そこにはゲンドウ、ナオコ、冬月もいる。
「碇、なぜここに子供がいる?
今日は大事な実験の日なんだぞ」
「ごめんなさい、冬月先生。私が連れて来たんです」
冬月はシンジがいることをゲンドウに指摘をすると、ユイから通信が入った。
「ユイ君、今日は君の実験なんだぞ?」
「だからなんです。
この子には人類の明るい未来を見せておきたいんです」
ユイは、モニターに映っているシンジを見ながら明るく言った。
そして実験が始まった。
ビー、ビー、
研究室に非常時に鳴らすサイレンが鳴り響く。
シンジは突然のことに呆然としている。
研究員達は慌しく、ゲンドウもパニックを起こしている。
「どうした何があった!?」
「シンクロ率が異常に上昇しています!!」
「シンクロ率を止めろ!!このままでは自我が崩壊してしまう!!」
「実験中止!!被験者の救出を最優先に!!」
「脳波、心音共に停止!」
「被験者生命反応がありません!!」
「回路切断だ!!」
「ユイーーーーーーーー!!!!!」
ゲンドウの叫びが響いた。
「この後ユイはエヴァに取り込まれてしまった。
そして我々は、ユイを救出するためにサルベージを決行した。
そしてサルベージは成功したのだがイレギュラーがあった。
ユイと一緒に出てきたのは、当時のシンジと同じぐらいの年齢でユイそっくりだった。
それがレイだ。
その後我々はその子を保護した、その時体に異常がないか調べたんだが、レイにはエヴァの遺伝子が混じっていた。
そのことが世間にばれたら、レイは実験の道具にされることはわかりきっていた。
よってユイに似ていることから、親戚の子ということにしたという訳だ」
ゲンドウは長々と説明した。
いつもの威圧感のある言葉は無く、それはレイの親としての言葉だった。
この事実を知らなかったリツコとミサト、シンジは驚いていた。
リツコは親戚の子と信じて疑わなかったし、ミサトもそう思っていた。
シンジは別のことで驚いていた。
ゲンドウがこんなにも話すところなんて見たこともなかったから。
使徒の遺伝子がはいっていることに関してはキョウやシンイチの術を見ていることから別段驚かなかった。
「理由は其処にある。
その遺伝子の他にコアがレイの中にあるはずだ。
そのコアは魂というべき物に定着しているから、不老不死というわけではない。
ただ、人間という枠から外れてしまった以上、天使には狙われるだろうな。
奴らは人間を傷つけることは出来ないが、その枠に外れているものに関しては攻撃できるからな」
キョウは狙われる理由について簡単に説明した。
「じゃあなぜシンジ君が狙われるのよ?」
ナオコは素朴な疑問を投げかけた。
シンジはエヴァに乗っていないし、シンクロもしていない。
よって、使徒の遺伝子を取り込むことなどありえない。
それなのになぜ?というところだろう。
「それについては僕が説明します」
シンイチは説明を始めた。
「シンジ?子供の頃、それも2,3歳の頃赤いビー玉のようなものを拾ったことを覚えているか?」
「ううん、全然」
シンイチの問いにシンジは即答した。
ユイはその話を聞き、昔のことを思い出そうとしている。
「あ!!そういえば・・」
ユイは何かを思い出したかのように、ポンッと手を叩いた。
「僕もそうだけどシンジが拾ったその時のビー玉は、アダムの破片だったんだ。
シンジはそれを体内の中に取り込んでいる、といっても食べたとかじゃなくて体の中に染み込んだ、が一番適切かな?
そしてシンジも綾波と同じ人間の枠を超え、天使に狙われる羽目になる」
「そうなんだ。」
「意外とあっさりだね」
「だってシンイチやキョウと一緒なんでしょ?だったら関係ないよ」
シンイチの説明にシンジは別段驚かずシンイチの言う通りあっさりしていた。
大人たちは表情には出していなかったが少し驚いていた。
シンジの報告書と比較すると、この場面では悲観的になるだろう。
もちろん大人たちもそうだろう、と思っていたのだが結果はあっさり。
少しの間で成長したシンジを見て、ユイは感動している。
「シンジとレイの保護に関しては俺たちに任してください。
といっても今まで通り生活してて大丈夫ですよ」
キョウがもっともネルフが気にしているだろうことを聞かれる前に言った。
「ねえ、聞きたいことがあるんだけど・・・」
「何ですか?ナオコさん」
ナオコは頭の中で考えていた一つの可能性をキョウに聞いた。
「貴方達はATフィールドを使えるの?」
その言葉に大人たちは、あ!!というような顔をしていた。
確かにコアがあればATフィールドを具現化、使徒のように壁を張れるかもしれない、というのがナオコの考えだったのだ。
「レイとシンジ、シンイチは使えます。俺は使えません、いや使えなくなったと言う方が正しいかな?」
初めてこの会議で疑問系で答えるキョウに、皆は少し意外に思ったようだ。
そのキョウの答えに、ナオコはさらに質問する。
「どういうこと?」
「人は常に、ATフィールドで体を維持しているのは貴方達にもわかってるはずです。
シンジ、レイ、シンイチはそれを使徒、またはエヴァと同じように具現化しているだけで、
ヒト、つまり第十八使徒と同じだから可能というわけです。
それを総合すると?」
ナオコは少し自信なさげに答えた。
「ヒト、使徒ではないってこと?」
「そういうことです」
キョウはそういうと服を脱ぎ始める。
「「「「ちょ、ちょっと!!」」」」
女性陣は、そのキョウの行動に驚く。
しかしキョウはそのことに対して特に気にした様子もなく、脱いでいく。
キョウは上半身裸になり、背中を全員に見えるように体の向きを変える。
「「「「「「!!!!」」」」」
キョウの背中には、赤い逆十字の傷が鮮明に残っていた。
「・・・・・これが神に反逆した印、人でも天使でも堕天使でも死神でもない、全てに属さない印です・・・・・
これを持っているものは神の恩恵であるATフィールドが使えなくなります。
俺は術でこの体を維持しています」
キョウはそういいながら、脱いだ服を着始める。
「貴方はなぜ神に反逆したの?」
「・・・・・・・・」
ミサトの質問にキョウは答えない。
「・・・・・・・それに関してはいずれお話します・・・・・・・」
キョウは静かに言った。
その声は天気なキョウでもなく、今話していたキョウでもない、その声は今まで見せたことのない声だった。
その後も今後の対策を話した。
シンジの今後の身の振り方に関しての話もあった。
結果はシンジはサードチルドレンにはならない、シンジはあくまでエヴァの予備パイロットという結論に達した。
一緒に住むという話はシンジは断固拒否し結局そのままということになった。
その話でユイは泣いていたが・・・・
そして今は家に帰りシンジ、シンイチは部屋で眠っている。
キョウはマンションの屋上で自分の愛刀「草薙」を見ていた。
月の明かりに照らされている赤い刀身は幻想的な光を出している。
「・・・・・見ていてくれ、俺の生き様を・・・・・・」
キョウが話した瞬間「草薙」が光った感じがした。
キョウの瞳は決意に満ちた目をしている。
「絶対に天使は殺す!!!!」
後書きのようなもの
シンジ、シンイチ、レイ、キョウの秘密が少し明かされました。
レイ、シンジ、シンイチはリリス、アダムの遺伝子、コアの破片を体の中に入ってます。
それによりATフィールドは展開することが出来ます。
しかし生身で展開できても使徒より強力なATフィールドを展開することは出来ません。
よってシンイチは術のほうが強いということでATフィールドを使っていません。(一応使えますが・・・)
今回は『秘密』を明かすということで説明文になってしまいました。
次回からはこんなことにはならないと思います。
感想良かったらお願いしま〜す。